旧ペンション 古代史観光拠点に

2017年04月18日

福岡県嘉麻市の馬見山(うまみやま)(978メートル)中腹の宮小路フルーツの里にある旧ペンションりんご村が昨年3月の閉鎖以来、約1年ぶりに再開する。鉄の彫刻家で、現在は遠賀川流域の古代史発掘に取り組む母里聖徳(ぼりきよのり)さん(60)、勤子(いそこ)さん(60)夫妻が隣の田川市から移り住み、「森のカフェミュージアム NICO(ニコ)」として28日に営業をスタート。フルーツと古代史観光の発信拠点を目指す。

 

「まさかペンションを経営するとは。これも何かの縁かも知れませんね」

満開の桜に囲まれたペンションの広いテラスで、母里さん夫妻は苦笑しながら語った。

晴れた日には遠く香春岳を望むNICOのテラスで談笑する母里聖徳さんと勤子さん

母里さんは芸術活動の傍ら、地元の文化団体とともに遠賀川流域の古代史の掘り起こしを進めている。

昨年6月には、ペンション近くにある馬見神社やふもとの鮭(さけ)神社などを訪ねるバスツアーを企画。県内各地から計約260人の古代史ファンがやってきた。

「筑豊といえば炭鉱と思っていたが、古代史や神社の伝承も面白い。もっとツアーを企画してほしい」

そんな観光客の要望に応えようとしていた矢先に、母里さんはペンションの閉鎖を知った。

馬見山は、天孫のニニギノミコトが降臨したと伝えられ、初代天皇とされる神武天皇の伝承も残る。

馬見神社には、ニニギノミコトとともに美人神のコノハナサクヤヒメも祭られており、バスツアーで最も人気のある神社だった。

しかも、母里さんの先祖は、日本一の槍(やり)を飲み取った黒田武士の母里太兵衛だ。ふもとの大隈には太兵衛が城主を務めた益富城跡があり、太兵衛の墓もある。

「フルーツと神話の里の発信拠点にならないか」。そう考えた母里さんはオーナーの理解を得て昨秋から建物周辺の木々を伐採し、半年かけて荒れたペンションをよみがえらせた。

「NICO」として再開を待つ施設の本館

田川市で実家の料亭あをぎりを切り盛りしていた勤子さんも、24年間のおかみ業に一区切りをつけて、母里さんとともにペンションに移り住むことにした。

ペンションの料理は、彫刻家仲間でイタリアに25年滞在し、日本イタリア料理協会会員でもある渡辺浩二さん=佐賀県唐津市在住=がレシピを提供。古代史仲間にも支えられ、28日からイタリア料理とワインを中心にしたカフェミュージアムとして営業を始める。

ニコは、ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの頭文字から命名した。

フルーツの里はナシに続き、これから白いリンゴの花が開く。ペンションでは800株のシャクナゲの開花も始まった。

古代史勉強会や渓流と山歩きの自然体験などを企画する母里さんは「渓流のせせらぎと野鳥のさえずり、満天の夜空には心が癒やされます」と来場を呼びかけている。

観光農園は最盛期には二十数戸を数えたが、担い手不足などで8戸に減少。ペンションの閉鎖は地元でもショックだっただけに、宮小路果樹組合の森博行組合長(70)は「地元の農家はみんな歓迎している。これを機会に活気を取り戻したい」と喜んでいる。

 

2017年4月18日、西日本新聞朝刊 もっと九州掲載

森のカフェミュージアム NICO

 馬見山のリンゴ農家が30年前に九州最大規模のログハウスとして整備した。カフェのある本館(175平方メートル)と5室の個室を備え、敷地内には40人以上収容できる研修棟もある。ニコは28日午後4時からログハウス本館でオープニングパーティーを開催。ビュッフェ形式でイタリア料理、イタリアワインを楽しめる。記紀万葉研究家福永晋三氏のミニ講話も予定。5000円。29日午後1時~4時は音楽ライブ(1ドリンク2000円)も予定。申し込みはNICO=0948(52)6303、ファクス=0948(52)6313。

住所:福岡県嘉麻市屏1658-2

この記事を書いたのは・・

西日本新聞筑豊総局

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